平成29年(ワ)第29099号著作権侵害差止損害賠償等請求事件
本事件は、群馬県立桐生高等学校応援団山紫会が原告となり、出版会社である株式会社太陽を、著作権侵害で、同会が著作権を有する写真(以下「本件写真」という)を掲載した書籍の印刷及び頒布の差止(著作権法第112条第1項)、同写真の廃棄(同2項)、及び損害賠償(同114条第3項、民法709条)を求めた事件です。
(この写真のようだ)
(出所:群馬県立桐生高等学校応援団山紫会ホームページhttp://www8.plala.or.jp/hall3001/ouen/09/0.htm)
本件写真は、埼玉県営大宮公園野球場で開催された関東地区春季高等学校野球大会における群馬県立桐生高等学校応援団による応援風景をカラー撮影したものです。
構図は、野球場のグラウンド部分と三塁側スタンド部分で画面を斜め(右斜め下方向)に分け,中央に女子生徒のリーダーを配し,同女が応援団を統率する光景を,スタンド上方斜め右(本塁寄り)のアングルから俯瞰する角度で,リーダーが両手を高く広げる瞬間(構図)を狙って撮影したものです。原告は、本写真をインターネット上にアップロードしました。
被告は、北海道内の高等学校の校訓や校歌,応援歌の歌詞等を紹介する全8集の書籍を発行し、一部頁の下方の部分(合計99箇所)には,それぞれ応援団による応援風景のグレー一色モノクロ画像(いずれの頁の画像も同じ画像。以下「本件画像」という。)を掲載しました。本件画像は、原告がインターネット上にアップロードしたカラー写真を、被告がデジタル加工してグレー色モノクロ画像に変換処理したものです。
争点
ア 本件写真の著作物性
イ 本件写真に係る著作権の侵害の有無
ウ 本件書籍の販売期間及び方法
エ 本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属
オ 損害の発生の有無及び損害額
ア及びイに関する裁判所の判断
ア 著作物性
裁判所は、「被写体の選択や配置,シャッターチャンスの捕捉,アングル,構図等に工夫を加えて撮影しており,撮影者の思想・感情が創作的に表現されているから,本件写真は写真の著作物として著作物性が認められる。」と判断しました。
イ 侵害の有無
裁判所は、一部異なる部分、不鮮明な部分、及びカラー写真とモノクロ画像の違いがあるものの、本質的特徴部分が同じであるとして依拠性及び複製を認定しました。
本事件の教訓
ア 写真は、一般的な構図であっても、被写体、アングル、シャッタータイミング等により創作性、すなわち著作物性が認定される。
イ カラー写真をモノクロ画像に加工しても、本質的部分が感得できる場合には、著作権侵害が認定される。
以上より、写真のコピペ、及び本質的部分が感得できる程度の加工での安易な利用は止めましょう。